脱毛Xについて(JBVPセミナーより)

先日のセミナーはポメラニアンなどに多い「毛周期停止」についてでした。この「毛周期停止」とは「脱毛X」のことで、最近名称が変わったとのことでした。頭部と四肢を残して脱毛しますが、健康上の問題はありません。原因不明ですが、病理的には毛根部に毛周期の異常所見として認められます。

人の「ハゲ」の犬版ともいえる「脱毛X」は、あくまで見てくれの問題ですが、身体のハゲたポメラニアンはいかにもみすぼらしく、場合によっては伝染性の皮膚病と勘違いされかねません。自然に脱毛する場合もありますが、トリミングの毛刈がきっかけとなることもあります。

犬種はポメラニアンを筆頭にチワワ、シェルティ、パピヨン、ハスキー、最近はトイプードルも発症しているようです。比較的若い未避妊、未去勢の犬が多い傾向にありますが、全ての年齢および避妊、去勢犬にも発症します。同じ犬種でも丸顔でマズルが短い、かわいい顔の犬が多いようです。

脱毛Xの治療に入る前に、甲状腺機能低下症、クッシング症候群による脱毛でないことを確認しましょう。次に、未去勢、未避妊の場合は不妊手術を行います。性ホルモンの異常で脱毛することあるからです。7割の症例で改善が認められています。ホルモン不足による合併症は無いようです。

痩せている場合は、栄養改善によって発毛することがあります。具体的には1~2割程度の増量、カロリーオフや高齢用フードであれば若犬用や成犬用に変える、アトピーに対する処方食も効果的なようです。

脱毛Xに対する治療は、ユベラNとハイチオールCの併用内服がメインとなります。場合によっては酢酸オサテロン(ウロエース)の1週間投与も効果的です。いずれも効果の評価は数ヶ月~半年先となります。裏技として、トリロスタンが効くようです。

治療によって発毛しても、まばらに生えることもあるようです。また、きれいに生えそろったとしても、1、2年後にまた脱毛症になることもあります。やはり毛根が障害を受けやすくなっているのでしょう。なので、トリミング特にバリカン刈りは禁忌です。

脱毛Xではありませんが、耳だけが色素沈着を伴い脱毛することがあります。特にダックスに多いようです。これは耳介の血流障害によるもので「しもやけ」に近い状態です。場合によっては部分的に壊死することもあります。治療は「ユベラN」でしもやけの治療薬です。


「ちゅーる」にご注意

 ねこに大人気の「ちゅーる」。異常なほどの食いつきの良さがあります。

そのゆえに、ごみに捨てたはずの「ちゅーる」のカラをねこが誤食して嘔吐する事例が先月末~今月頭にかけて2件ありました。

犬に比べると、ねこはゴミ漁りは少なく、あったとしても食べられるものを厳選して食べるのですが、「ちゅーる」がくっついているためかビニールを食べてしまうようです。

 

 この2件では、ともにバリウム検査を行いました。

 バリウムの利点として、

・重い(泥水のような)液状なので、詰まったものを押し流してくれる。

・胃腸の粘膜保護の作用がある。

・レントゲンでバッチリ写りますので、異物が詰まっている場所で流れが滞っているのが分かります。

・レントゲンに写りにくいビニールやプラスチック、ゴムなども、バリウムが抜けて輪郭が見えます。

・バリウムは6時間もあれば胃からは無くなってしまうのですが、それ以上経過しても胃にバリウムが残っている場合、なにか異物が存在しているか、潰瘍などに残っていることが考えられます。

 

 1件目では、6時間経過しても胃から全くバリウムが流れず、胃切開により「ちゅーる」のカラを取り除きました。

 「ちゅーる」のカラは、比較的硬めのビニールなので、飲み込んだあとに拡がるので内視鏡でも取り除きにくいのではないかと思います。

 

 2件目は、すんなり胃からは流れたのですが、十二指腸(胃から流れてすぐ)で止まってしまいました。また、開腹かと思われたところ3時間経過したレントゲンで先に流れていることが分かり、一泊点滴入院で退院できました。

 

 くれぐれもご注意ください。

 



熱中症に注意

暑い日が続きそうです。

犬は暑さが苦手です。パンティング(口を開けてハアハアする呼吸)による気化熱で体温を調節するのですが、限度があり体内に熱がこもりがちです。短頭種(シーズー、ペキニーズ、パグ、フレンチブル、ブルドック、ボストンテリアなど)や太っていたり、心臓に問題があったり、高齢だったり、ふだんからパンティングするとゼコゼコする子は、特に注意が必要です。

 

・散歩は早朝もしくは日が暮れてから、日中の散歩は極力避けましょう。

・外で飼っている場合は、必ず日陰をつくり、きれいな水をたっぷり与えてください。

・室内犬でも留守にしたり、目の届かない場所にいる場合、エアコン(ドライ)をつけ扇風機を回してください。

・当然ですが車中へ置いておくのは厳禁です。

 

症状としては、激しいパンティング、目が充血して口の粘膜も赤く、あまり動きたがらずグッタリしてきます。重度になると吐いたり下痢したり、意識がはっきりしなかったり、痙攣がおこったりします。

意識障害のある重症の場合は処置しても助からないことが多いです。

 

熱中症かなと思ったら、まず涼しいところへ移動、水をかける(冷水でないほうが効果的)、水が飲めるなら飲ませる。そして、すぐに最寄りの動物病院へ連絡して、指示を受けてください。

離乳期の仔猫


 仔猫を育てる際のポイントは

・生まれて1週間くらいは自力排泄ができないので、肛門周りを湿したティッシュなどで刺激して排泄を促す。

・仔猫専用のミルクを与える。牛乳はダメです。

・哺乳瓶を使う。飲ませる時はうつ伏せで。(母親猫のおっぱいを飲む時の格好で・・・。仰向けは誤嚥の危険あり)。哺乳瓶で飲めない時、まずは乳首の大きさが合っているか確認。吸う力が弱い場合は注射器などで与える。

・毎日必ず体重を計る。順調であれば10~20g増える。増えてなかったらミルク不足。減っていたら命の危険。


仔猫の週齢の見分け方

・へその緒は2~3日で干からびてとれることが多いですが、7日くらいついていることもあります。無理に取る必要はありません。

・目が開くのは7~14日。

・乳歯は2週齢から生え始め、4週齢で生え揃う。

・4~6週齢で睾丸が降りる。

・体重の推移(目安)
生後100g→1週齢200g→3週齢350g
・仔猫の体温は低め
2週齢まで35度、2~4週齢まで36~37度、4週齢以降は38度前後。成猫では38~39度。